ライブのチケットをブロックチェーンにのせたら、高額転売はなくなりますか?しくみと実際の例、そして限界

· 使いみち

ライブのチケットをブロックチェーンにのせたら、高額転売はなくなりますか?

台帳の中の取引は止められても、台帳の外の取引までは止められません

予約

1人が買える枚数を決める

台帳に持ち主を記録

座席・持ち主・買った値段

転売は公式の窓口だけ

決めた値段まで

入場の確認

台帳の持ち主と身分証を照らし合わせる

わかりやすくするための図です。現代カードの発表・YTNの記事(2024年)、CM.comの発表(2025年)、韓国の改正公演法の記事(2026年)をもとに描きました。2026年9月29日確認。

転売でもうけるのは止められますが、台帳の外での取引までは止められません。チケットをブロックチェーン(みんなでいっしょに持っている台帳)にのせると、転売の道を公式の窓口ひとつにしぼって、値段もしばれます。なので、ネットで上乗せして売ることは難しくなります。

それでも、チケットが入ったスマホやアカウントをまるごと渡す取引は台帳に残りません。実際に試した現代カード(韓国のクレジットカード会社)の公演でも、入場のときに身分証を別に確認していました。

高額転売はなぜ起きるのですか?

座席は少なく、見たい人は多いのに、チケットの値段は定価で決まっているからです。定価で買って高く売れば、その差がもうけになります。

そのため、発売の瞬間にマクロ(同じ入力を自動でくり返すプログラム)でチケットを買い占めることが起きます。韓国の大衆音楽の公演業界の団体が、2026年9月17日の討論会で出した独自の調査では、2026年1〜8月に確認された高額転売の取引は12万9,528件でした。

同じ調査で、歌手ごとの平均の上乗せ額がいちばん高かったのは、1枚あたり約47万韓国ウォンでした。2026年には、海外のサイトで転売したり、チケットの代わりにグッズに上乗せしたりする抜け道の取引も出てきたそうです。

韓国の法律も変わってきました。2024年3月22日からは、マクロで買ったチケットを上乗せして転売すると、1年以下の懲役か1,000万韓国ウォン以下の罰金になりました。それまでは、韓国の軽犯罪処罰法(1954年制定、ダフ屋の条文は1973年に追加)で、その場での取引だけに20万韓国ウォン以下の罰金を科せました。

マクロを使ったかどうかを証明しにくいという指摘が続きました。そこで2026年1月29日に国会を通った韓国の改正公演法は、マクロかどうかに関係なく、転売目的の不正な購入を禁止しました。売り手の同意なしに、くり返し、または商売として買った値段より高く売る不正な販売も禁止しました。この法律は2026年8月28日から施行されていて、販売額の50倍まで課徴金(国が科す罰金のようなお金)を科せます。

ブロックチェーンにすると何が変わるのですか?

チケット1枚が台帳の1行になります。「何番の座席、今の持ち主、買った値段」が書かれるのです。こうして台帳に書かれた、ひとつしかないデジタルのものをNFT(非代替性トークン)と呼びます。

この台帳は、たくさんのパソコンが同じ内容を分けて持っています。一度書かれた記録は、1か所でこっそり直すのが難しいです。公開の台帳なら、エクスプローラー(台帳をだれでも見られるように見せてくれるサイト)でだれでも確かめられます。

ここにルールをかけます。持ち主を変えるのは公式の窓口だけ、値段は決めた金額までしかできないようにします。

実際に試したところはありますか?

あります。ただ、ほとんどは1つの会社が自分の公演や大会で試したものです。

韓国では現代カードが2024年1月24日、2月7日から3週間開く「現代カード Curated 92」の公演チケットを、すべてNFTチケットで出すと発表しました。抽選で当たった人だけが6万6,000韓国ウォンで買えました。買った人だけが見られるようにして、譲渡を止めたとしています。現代カードは、2023年9月のダヴィンチモーテルの公演チケットもすべてNFTで出したと言っています。

YTNの記事(2024年2月12日)によると、1人1枚しか買えず、アプリのQRコードで入場しました。ただ、入場のときに身分証の確認が別にありました。専門家は、スマホごと渡す抜け道が残っていると見ていました。

海外では、欧州サッカー連盟(UEFA)がユーロ2020の大会で、ブロックチェーンの技術を使ったモバイルチケットのアプリで約100万枚を配りました。事例の記事(2021年8月)によると、56万枚がアプリの中で同行者に渡されました。偽物のチケットを防ぐことに重点があり、転売の値段をしばったという話はありません。

オランダのGUTS Ticketsは、2017年の記事で、チケットをもっと高く転売できないようにすると紹介されました。2025年2月25日にこの会社を買ったCM.comは、チケットを転売するともとのコードが無効になり、チケットが決まった値段でもう一度売られると説明しました。どちらも会社側の説明です。

日本は技術より先に法律で止めました。2019年6月14日から、転売禁止を知らせ、日付と座席(または入場する人)を決めて、買った人を確認したチケットを、主催者の同意なしに商売として販売価格より高く転売することを禁止しました。文化庁の案内には、同意のない高額転売が今も見られると書かれています。

韓国政府も2024年9月13日、翌年までに20億韓国ウォンをかけて、NFTのような新しい技術を使った予約システムを支援すると言いました。その後どんなシステムができたかは、公開資料で確かめられませんでした。

SASEULでは?SASEULでライブのチケットを売るという公式の発表は見つかりませんでした。2023年8月9日の公式のお知らせによると、SASEULのウォレットアプリGuardeeに、NFTを作ってリンクで共有する機能が入ったことはあります。

ブロックチェーンで解決できないことは何ですか?

台帳の外での取引です。チケットが入ったスマホやアカウントを渡しても、台帳の持ち主の欄はそのままです。グッズに上乗せするような抜け道も、台帳には見えません。

本人確認は、けっきょく人がします。台帳に書かれた持ち主と入ってくる人が同じかを見るには、身分証を見なければなりません。最初にほかの人の名前でまちがって書かれると、そのまちがった記録もそのまま残ります。

アプリを使えない人が取り残されることがあります。YTNの記事も、アプリだけで使うチケットは、デジタルに慣れていない人にとって別の不公平になりうると指摘していました。

値段をしばるのは技術ではなく、主催者が決めたルールです。法律が支えてくれなければ、公式の窓口の外での取引を罰するのは難しいです。だから韓国も法律を変えました。

1つの会社がチケットを全部管理するなら、ふつうのシステムでも似たルールをかけられると思います。ブロックチェーンが足すのは、いくつもの場所が同じ記録を分けて見て、あとからこっそり直しにくいという点だと推測しています。

SASEULがどんな台帳で動いているかは、SASEULの基本情報とSASEULの2つの台帳のしくみにあります。SASEULのコイン(SL)が今何に使われているかは、SASEULのコイン(SL)は何に使うのですか?にあります。

参考にしたところ


記事6本、政策ブリーフィングの資料2つ、会社の発表2つ、韓国と日本の法令の原文3つ、文化庁の案内、SASEULの公式のお知らせ・エクスプローラー・CoinMarketCapの紹介を、2026年9月29日に直接開いて確かめました。